日本の流行語大賞のように

 日本の流行語大賞のように、英国のオックスフォード辞典では、毎年その年を最もよく表す単語を選んでいるそうで、2016年は「ポストトゥルース」が選ばれました。「ポスト」は「終わった」あるいは「重要ではない」。「トゥルース」は「事実」だから、客観的な事実はもはや用はなく、個人の感情に訴えることの方が影響力を持っている状況を意味します。要するに「嘘か本当かは問題ではなく、それが気に入るかどうかで決める」ということで、事実に基づかなくても好みにマッチするかどうかが優先されるということです。
 昨年6月の英国のEU離脱問題でも、莫大な拠出金を払っているということが離脱選択の理由の一つと言われていますが、実際は英国への補助金で相殺されていて、拠出金の話は嘘であったことを離脱決定後に離脱派が認めたということがありました。
 夏以降、米国大統領選挙ではトランプ氏の演説はポストトゥルースでないものを探すのが難しいとまで言われています。真実であろうがなかろうが、耳に快く響く言説のみを受け入れる支持層が増えた結果、当選したということも言えるのではないでしょうか。
 快く響けばOK


 この背景として言われているのが、SNSを代表とするネット社会のあり方をあげることができるのではないでしょうか。玉石混交の膨大な情報が乱れ飛んで真偽の見分けがつかないこともあり、耳に快く響き、嘘でも気分を明るくしてくれる情報を選ぶようになるのだと。検索で同じ思いのアクセス数が増えると更に同調し、感情に任せた短い言葉のSNSで更に多数に拡散するのです。


 日本においてもその流れから、ポスト真実化時代が急に来たのでしょうか?これまでもさまざまな「神話」が語られてきました。先の戦争中の「万世一系」や「神国日本」の標語。戦後も「自衛隊」という呼称(断っておきますが、不正な侵略から国土と国民を守るのは当然です)。東日本大震災から、もう6年になりますが、昨年だけで震度4以上の地震は192回あったと言われています。つまり1日おきにどこかで大きな地震が起きているということですが、そういう国土に原発を54基も作ってきました。これも莫大な宣伝費や地域振興費?を使って「安全神話」を流布させてきたからでしょう。
 福島は「アンダーコントロール」されていると言ってオリンピックを誘致しました。経済のためならなりふり構わずということでしょうか「武器輸出」するため「防衛装備移転」と言い換え、集団的自衛権行使の法律を「平和安全法制」と呼び、オスプレイの「墜落」を「不時着」、南スーダンでの「戦闘」を「衝突」と言い換えるなど、ポストトゥルースを数え上げるとキリがありません。
 首相は「安全が確認された原発から再稼働する」と言えば、原子力規制委員長は「規制委は原発の安全を保障してはいない」と言います。最近では元都知事も、専門家ではないから、判断する知見がないので部下の言うとおりハンコを押した旨の発言もしています。
 だれも責任を取らないということを表明しているのですね。
 まやかしの言葉を鵜呑みにせず、自分で考え、事実は何かを見極めていくことはとても大事なことです。
  (池内了氏のコラムを元に書きました)


 「慙(ざん)」(ざん)は人に羞(は)ず、「愧」(き)は天に羞ず。これを「慙愧」(ざんぎ)と名づく。「無慙愧」(むざんぎ)は名づけて「人」とせず、名づけて「畜生」とす。 【教行信証・信巻】
「自分の事を恥ずかしい、悲しい、と思わない人は人ではない。畜生という」とは親鸞聖人の言葉です。自分(たち)さえ良ければいい、という根性が透けて見える昨今の私たちである。